文部科学省のあべ大臣は2025年4月22日、定例記者会見を開催しました。会見では、前日に視察した神奈川県川崎市の先端医療イノベーション拠点「キングスカイフロント」と不登校生徒の学びの場「学びの多様学校」について報告。また、学校図書館の充実策、PTA会員数減少問題、宇宙飛行士の活躍、物価高騰による学校給食への影響など幅広い教育課題についても見解を示しました。
【視察報告】「産学官連携の仕組み作りが重要」—キングスカイフロントと学びの多様学校を訪問
あべ文部科学大臣は会見冒頭、前日4月21日に実施した視察について報告しました。
まず訪れたのは、神奈川県川崎市殿町にある国際戦略拠点「キングスカイフロント」。ここでは、ライフサイエンス分野における先端的なオープンイノベーション拠点の取り組みや、医療・創薬の基盤に関わる最先端の研究について説明を受けました。
「持続的に産学官が連携していくための仕組みを作ることがまさに重要である」と認識を新たにしたあべ大臣は、「引き続きイノベーション創出のための環境整備を進めてまいります」と述べました。
次に訪問したのは、東京都大田区立の「学びの多様学校・未来学園中東部」。ここでは、生徒一人ひとりが笑顔を交えながら生き生きと学んでいる姿を実際に見ることができたと報告。
「学びの多様学校の意義、さらには重要性を改めて認識することができました」と感想を述べたあべ大臣は、「引き続き不登校生徒の多様な学びの場の確保に向けた取り組みを進めてまいりたい」と強調しました。
読書環境の充実に向けた取り組み
記者会見では、学校図書館の運営充実についての質問も寄せられました。公共図書館の数が増加している一方で、学校図書館の拠点数減少や子どもの読書率低下など課題も見られる中、文部科学省の対応が問われました。
あべ大臣は、文部科学省が「第5次子供の読書活動推進に関する基本的な計画」および「第6次学校図書館図書整備5か年計画」に基づき、読書活動の推進に取り組んでいることを説明。2025年度からは新たに「図書館、学校図書館と書店を含む地域の様々な関係機関の連携・協働による読書活動の促進を通じた読書の街づくりを推進する事業」を実施する予定であることを明らかにしました。
また、2024年12月より「図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議」を開催し、デジタル社会に対応した図書館・学校図書館の運営充実のあり方や、多様な人々のための読書環境の整備などについて検討を進めていることを説明。学校図書館の活用および学校図書館と地域の公共図書館の連携を重要課題と認識しており、有識者会議での議論を深めて今後の推進施策のあり方を検討していくとの考えを示しました。
PTAの会員数減少と今後のあり方
日本PTA全国協議会の会員数が2024年度の1年間で100万人以上減少しているとの報道を受け、PTAのあり方についての質問も出されました。
あべ大臣は、公益社団法人日本PTA全国協議会において様々な要因により会員数が減少していることを認めつつも、同協議会が信頼回復に向けた運営健全化の取り組みを進めていることを説明しました。PTAは「学校・家庭・地域の連携を推進する上で重要な役割を果たしている社会教育関係団体」であるとし、文部科学省としては「公益社団法人日本PTA全国協議会がPTA関係者の理解をしっかりと得ながらガバナンス構築に向けて引き続き努力をされ、各地域においてPTA本来の役割が活発に行われることを期待している」と述べました。
大西拓也宇宙飛行士のISS船長就任への期待
会見では、日本時間2025年4月19日未明に大西拓也宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)の船長に就任したことについても質問がありました。
あべ大臣は、大西宇宙飛行士がロシアのアレクセイ・オフチーニン宇宙飛行士からISS船長職を引き継ぎ、日本人として3人目の船長に就任したことを紹介。この船長就任は「日本のこれまでのISS計画への貢献に加え、大西宇宙飛行士の能力や実績が高く評価されたもの」と認識を示しました。
さらに「大西宇宙飛行士がISSの船長として他の搭乗員をまとめ、様々なミッションを遂行していくことで、世界に期待される我が国の地球低軌道での活動の充実・発展に貢献していただくことを心から期待申し上げる」と述べました。
物価高騰と学校給食への影響
会見の最後には、総務省から発表された全国消費者物価指数で米類が前年同月比9.0%以上上昇し過去最高の上昇率となっていることを受け、学校給食への影響についての質問がありました。
あべ大臣は、文部科学省が昨今の物価高騰を踏まえ、いくつかの自治体に対して対応状況の聞き取りを行っていることを説明。「給食の回数を減らすなど予定していた献立や食材の変更を行っている」と回答した自治体もあると明かしました。
一方で、物価高による給食費負担増を防ぐための対策として、「主食の米については年間使用量を契約しており、値上げをある程度見越した価格で調達している」自治体や、「保護者負担額との差額部分を市で負担している」自治体もあると説明しました。
文部科学省としては、「学校給食の質の確保と保護者負担の軽減の両立を図る」ため、2024年12月に教育委員会に対して「重点支援地方交付金を活用した事業者負担の軽減及び保護者支援について」通知したことを紹介し、「引き続き活用を促していきたい」と述べました。
引用元:
- あべ文部科学大臣記者会見(令和7年4月22日):文部科学省
- 文部科学省「第5次子供の読書活動推進に関する基本的な計画」
- 文部科学省「第6次学校図書館図書整備5か年計画」
- 文部科学省「重点支援地方交付金を活用した学校給食に関する事業者負担の軽減及び保護者支援について(通知)」(2024年12月)
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